株式会社きなり
■循環型農業を追及する「きなり村構想」
工業用地として造成されていた広大な土地を購入して整備したのが、桧木尾にある循環型農園「きなり村」だ。
地域の人にはあまり知られていないが、農園には西洋野菜・アーティチョーク(朝鮮アザミ)や季節の野菜を栽培する農地や農園施設、また生物資源を活用したエネルギーの研究を行う施設がある。敷地内には、小型太陽光発電、風力発電などの設備を備え、農業用水を活用した水力発電などの設備も計画し、エネルギーを含めて、すべて自社で賄う循環型農業を展開している。
■ここでしか食べられないメニューを考案
巨大なスクリーンと目印の「村長かかし」が印象的なカフェ「Cafe de kinari」は、時間をかけて、少しずつ形にしてきた。駐車場の整備を終えて、ようやく完成形となった。
有名レストランで活躍したシェフを招いて提供しているのが、「きなり鶏」の卵や鶏肉を使ったこだわりメニューだ。
「きなり鶏」は、有名なブランド鶏をかけ合せて開発した自社のオリジナルブランドの鶏。「きなり村」で飼育し、順調に数が増えている。今後、鶏肉の販売は考えているが、卵はこのカフェのみで使用する予定。きなり鶏の親子丼「Oyaco Don」やきなり鶏の肉やつみれが入った「きなりCO‘鍋」は、まさに「ここでしか食べられない」メニューだ。
■佐伯・吉和には最高の環境がある
佐伯・吉和は、水がおいしくて山がある。広島から1時間と近いことも魅力の一つ。美しい自然環境や優れた景観が豊富なヨーロッパに精通した人が、「最高の環境」だと認めるほどだという。
この環境を十分に活かすためには、佐伯・吉和は「ゆっくり過ごしてもらうところ」というコンセプトをはっきりと打ち出すべきだと考えている。例えば、土日は車の速度を落とすような取り組みもおもしろい。農業をしながら、ゆっくり人生を送る人を対象としたビジネスやサービスに可能性があると見込んでいる。
カフェが立地する峠は、廿日市の沿岸部から佐伯・吉和方面へと向かう途中。ちょうどデジタルの世界とアナログ世界の境となる場所だと考えることができる。地域をとらえる目線や発想を変えてみると、今まで気づかなかったことが見えてくる。